私は最近、自分のためにお金を使うことを許すようになった。
お金を使うことによって、自己肯定感も上がったと思うし、何より節約していた時よりも楽しい。
そんなことを、前回「自分が何をしたいか見失った私が、買い物で自分を取り戻していく話」に書いた。
もちろん、不測の事態のための貯金は必要だけど。
そんな私は、先日、ルイ・ヴィトンに行った。
百貨店に入っている店舗。
以前なら、そもそも入り口を通るのが緊張するから、外から眺めていただけの店だ。
たまの海外旅行の時は、テンションが上がって中に入ったことはあるが、その程度に緊張する店。
貧乏症な私は、ブランドバッグを中古で買おうとしていた。
そもそも高いし、同じバッグだし、誰かが使っていたものでも、使えば一緒だし、と思っていた。
なのだが、ファッションにもお金にもこだわりがない夫が、こればかりは許せないとばかりに物申してくる。
ブランドものを中古で買うな、ブランドものは、店舗で買う体験そのものを買うものなのだ、
それがブランドだ、と何やら熱く説いてくる。
私は、ヴィトンの「いかにも」なモノグラムのバッグが欲しくなった。
昔は、そんな、いかにもブランドもののバッグ、いつ使えばいいんだろう、と思っていたが。
「自己顕示欲か、自信がないからそうなのか」とか思っていた私は、だいぶひねくれていたなとは思う。
心では惹かれているのに、それを打ち消すための理屈がいくつも浮かんでくる。
似たような革のバッグなら、ずっと安く手に入るのに、あんなに高いのはおかしい、っていう人もいる。
もっとずっと、軽くて丈夫で使いやすいバッグがあることも知っている。
だけど、可愛い。
これまでの私は、心で惹かれているとしても、頭優先で物事を決めてきた。
そしてそれが、悩みを深くしていることもわかってきた。
だから今の私は、理屈だけで決めることをやめている。
結局、心が惹かれたことには、かなわないからだ。
いくら理屈で考えて出した結論でも、心が正反対のことを望んでいたら、いい選択になってくれない。
だから、心に従うことを自分に許すことにしている。
そんな私は、ヴィトンの小さなバッグが欲しい。
ある時、百貨店の近くに行ったから、実物を見てみるために、ふらっと店舗に入ってみた。
入り口近くに店員さんが立っていたが、軽く挨拶しながら、思い切ってどんどん中に入る。
店舗に入ってみると、バッグ以外にも、財布やら、スカーフやらが綺麗に並んでいる。
私ひとりで店に入ったが、なんと中には、客は私ともう1人だけで、店員さんの方は5人もいる。
なんだ、このバランスは。
と、一瞬ひるんだが、そのまま無かったことにして、奥のバッグもくまなく見て回る。
私が探していたスピーディ20の色違いがそこにあり、さっと近づいてきた店員さんに声をかけられたので、モノグラムがあるか聞いてみた。
すると、目当てのバッグは、在庫1個だけで、しかもそれは、もう1人のお客さんが、今まさに、ちょうど見ているところだった。
横目にちらちらと、可愛いなぁと見ていたら、すかさず店員さんが色違いのバッグを持ってくる。
スピーディ20の色違いのバッグ、持った時のサイズ感がわかるから、と実際に持たせてくれた。
可愛い。
可愛い、んだが。
持ってみたら、わかった。
コロンとした形だから、斜めがけにするとバッグが思ったより目立つ、手持ちの方が圧倒的に可愛いな。
でも、手持ちか。
子供といると、斜めがけして、バッグのことは忘れたいんだよな。
あと、私はこのスポーティなストラップが苦手だから、ヌメ革のストラップを追加で買うか?
そんなこんな、わかりやすく迷っていると、店員さんが他のバッグを2種類おすすめしてくれた。
まず、ディアヌ。オーソドックスなサイズのショルダータイプ。
使いやすそうだよね。
そして、ブーローニュPM。
これ、多分、オンラインショップで見ていたら、完全スルーしてたと思うけど、意外といいかも。
実際に触って、開けたり閉めたり、肩にかけて鏡を見てみたら、え、これ、いいよね?って二度見した。
日常のどんなシーンでも使いやすそう。
肩にもかけられて、斜めがけにしても、バッグが薄いから、体にぴったりとフィットする。
チェーンが嫌味ないアクセントになってるし。
あれ?スピーディ20よりいいかもしれない。
結局、その日は、別のお客さんがずっとスピーディ20をじっくり見ていたので、私はお目当てのそれを見ることができず、そのまま帰ることにした。
だけど、帰り道。
私は、何も買わなかったのに、ウキウキと心踊っていた。
ヴィトンの店舗での体験が、とても楽しかったのだ。
嫌じゃない距離感を保ってくれつつ、さりげなく冷たい水を出してくれて、私はそれを、ここはもう、ありがたくいただくことにして、店員さんに色々相談してみた。
それに答えてくれながらも、自分では選ぶことのなかったバッグについて教えてくれて、今ではそちらの方が欲しくなっている。
店舗に行って、店員さんと話さなかったらわからなかったことだ。
これか、これが夫の言っていた、ブランド体験なのかもしれない。
こうした体験も全て込みになった金額なのだ、と夫は言っていた。
中古で買っても、同じヴィトンのバッグ。
バッグは、同じく可愛い。
だけど、店舗で店員さんと話しながら見たバッグは、なんだか別のもののような気がする。
さらに、最初は白いヌメ革が飴色に育っていく時間を、共に歩む。
そんな「キラキラした体験」をするのも悪くないと思えてきた。
人生、そろそろ折り返しかな。
子供たちも、いつか大きくなる。
私たちは、いつまで今と同じように過ごせるのかわからないのだ。
そんな今、「いつか」を待つのは、もったいない。
私は、ヴィトンのバッグを持つことを自分に許し、
どうせ持つなら、20年後なんて待ってないで、今、買おう。
お金は、持っていると安心できるかもしれないが、使ったら、ウキウキする体験もさせてくれる。
…という、理屈をまた頭で考えて、心のワクワクを後押ししようとしている。
そうだ、
私は、感動したいのだ。
心が動く体験をしたい。
ルイ・ヴィトンに行った体験が、そんなことを思い出させてくれている。

